PARTS112 最悪の事態

もうずいぶんとあいこらの感想を書いてませんでしたね。
ですがここにきて私好みの展開になってきました。鳳が転向してつばめ先生も寮を出て、残ったのは桜子・弓雁の二人。
そして桜子がハチベエの部屋を掃除していたら、撮り溜めてたパーツ写真がバレてしまったと。
ここが前回までのあらすじ。
 

なんという皮肉な話なんだろう…
桜子がハチに本気で恋してしまったがゆえに、彼が恋愛に目覚めたきっかけを全否定してしまうことになるなんて。
 
ハチは桜子に恋をしたことで、これまで彼のすべてだったパーツに対する思い入れが薄れたと。しかしハチベエ自身の“最高の女を見つける”という信念は少しも変わっていません。つまりパーツ愛と恋愛はハチにとっては決して別物ではなく、共通の目標のために成り立っていたものなんですね。
もっと言えば、ハチのパーツ愛の原点が最高の女に出会うためと言うなら、ハチの恋愛は既にそこから始まっていたんだろうなぁ、と。
今までとは違って…と言ってるあたり、おそらくハチベエ自身は気づいていないんだと思いますが、本人が固く守っている「パーツを愛する者ならそのパーツを持つ者も愛せ」というのは、彼が最高の女を見つける手段をパーツに求めたんだと思います。そして“最高の女”を桜子に見出したことで、パーツの役割は終わったと。
つまりハチのパーツ愛は、オヤジの背中を見て育ってきたという証でもあります。ですから、桜子がしたことは、ハチベエの生き方に対する全面否定と言っても過言ではないのです。
 
桜子は、ハチの純粋さに惹かれてしまったがゆえに*1、普段からわかっているはずの彼の性癖が、中学時代、大好きだった谷山先輩が豹変して桜子を押し倒したのと重なってしまったんでしょう。
そして彼女は、ハチを信じられなくなってしまった。裏も表もなく、強くて一本気なところに惚れ込んだのなら、彼の変態ぶりにそれがよく表れていたのを見ているはずなのに…
 
つまり桜子は“自分の気持ちをハチベエに裏切られた”のではなく、
ハチベエの想いを受け入れる勇気がなかった”んでしょうね、きっと。
 
ハチはハチで、その純粋さゆえに、それによって誰かが傷つくってことにはすごく脆いんですよね。だから、ここで改心した谷山先輩がハチの最大の敵となってしまった。
谷山先輩は負の心でもって桜子を傷つけてしまったわけですが、それを後悔したことによって、“ハチベエが自分と同じことをして桜子を傷つけた”と思うのは必然的でしょう。
そしてハチは、“桜子に嫌われた”ということから自分の行為が負であるかのように思ってしまっている…まあこれはあくまで結果論ですが。だから、谷山先輩が何をふりかざしてこようと、今のハチはいかに正しかろうとなすすべがないはず。
 
今のハチベエには“理解者”が絶対に必要なんですよ。
しかし【パーツ側】の美術部連中(とくに渋沢)は、恋愛感情から目をそむけるためにフェチ道に走っている。よって彼らではその役割はまず果たすことはできません。あくまで恋愛感情を持つ側からの見方をした上で、ハチベエを応援しなければならない。
それができるのは、彼の変態ぶりを知った上でなおもそのひたむきさ、純粋さを理解している弓雁ちゃんしかいないのです。
 
井上先生が弓雁ちゃんだけ寮に残したのは、そういうことだったんですね。
 
 
次回は谷山先輩とハチベエがぶつかることになりそうですが、そこに弓雁ちゃんがどう入っていくか。
そこがすべての鍵になりそうです。

*1:その純粋さが、パーツ愛が彼の恋愛を助ける手段であったことが見て取れる